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「ここだよね
土方の恋仲がいるっていう遊廓」
「…ああそのはずだ
俺はもう帰る
あとはおまえだけで好きにやってくれ」
「どうして?
…逃げるの?」
「俺はその女に罪があるとは思わねぇ」
「ふ~ん
まあ好きにしていいよ」
(幕府側の女なんて殺してもまだ足りないくらいなんだけどね)
男は不敵に笑った
運命というものは時に残酷なのかもしれない
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「次は萩の間や」
「わかりました」
朝が来て、そしてまた夜が来た
それでも今日は土方が来てくれる
あの日以来土方は最低でも一ヶ月に一度は来てくれる
夜桜は嬉しそうに顔を緩め
今か今かと土方を待っていた
「どのようなお客様ですか?」
夜桜は女将に聞いた
「たしか男二人組やったよ
二人共えらい綺麗な顔しとったなぁ」
(また違う…)
夜桜はがっくりと肩を落とした
綺麗な顔というのは当てはまるが女将と土方は知り合いなのだから女将が覚えていないはずはないのだ
(早くお会いしたいわ…)
それでも次のお座敷へ上がらなくてはならない
「…失礼します」
夜桜は襖に手をかけた
そして入った瞬間夜桜の薄紅色の頬は一気に血の気を失い青白くなる
「…栄太郎…様…」
夜桜はかすれた声で確かにそう言った
''栄太郎''
吉田稔麿の幼名である
吉田松蔭の開いた松下村塾で学び高杉晋作、久坂玄瑞、入江九一等と共に四天王と呼ばれた尊王攘夷派の長州藩の活動家だ
栄太郎こと吉田は目を見開いた
その理由は昔攫われてしまった自分の愛した少女が現れたから
それと共に気付く
夜桜の今置かれてる現状に
遊女であること
その上土方の恋仲であること
愛は時に憎しみに変わる
愛すれば愛する程にそれは深く残酷であるのだ
「…桜、ずっと君を探していたんだよ
まさか遊女になっていたなんて…
その上壬生狼と恋仲になっていたなんて!」
「...…!!」
吉田は夜桜の腕を引き組み敷いてその上に跨がった
そして夜桜のほっそりとした首に手をかけ徐々に力を加えていく
「…っ……」
「…どうして?
君まで僕から離れていくの?
昔誓ったじゃないか
君の身体も顔も髪も全ては僕のものだって
絶対に他の奴には触れさせないって」
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