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この物語を記すにあたり、まず語らなければならない少女がいる。
少女の名前は優。
フルネームで村上優(むらかみゆう)。
年は結局わからないままであったが高校生ということはないだろう、おそらく中学生だ。
もっとも、そのことを確認することを僕らはしなかったので、実際のところはわからない。
僕らというのは僕こと松川浩(まつかわひろ)、僕の姉にあたる松川朱美(まつかわあけみ)、姉の彼氏の鈴木陽平(すずきようへい)の三人である。
優と出会ったのは高校三年夏休みのことだ。
先ほど「僕ら」という言葉を使ったが、実際には優と会うのは僕がほとんどで、姉と陽平さんは一度だけしか優に会っていない。
結論から言うと、姉と陽平さんは別れることになり、優は死んだ。
そのことに多少の責任は感じるが、遅かれ早かれ姉と陽平さんは別れていたであろうし、また優も遅かれ早かれ死んでいただろう。
優にとって、この世界は生きやすいものでは決してなかったのだと思う。
優がどんな少女だったのか、言葉で説明するのは難しいのだが、普通の人とは、少なくとも僕が知っている人たちとは、確かに違っていた。
ただ一つ言えるのは、僕は優が好きだったし、死んでほしくはなかったということだ。
けれどそれは、僕の身勝手な願望に過ぎない。
そう、優はずっと死にたがっていたのだ。
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