2 蝉が鳴く頃

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大通り沿いの歩道を自転車で進む。 朝と言えども、この季節は十分に暑い。 時間とともに、じっとりとした汗が肌と服をくっつける。 散歩中と思しきおじさんや、ランニングに勤しむお姉さんを追い越し、横を走る車に追い越される。 ふと視線を遠くへ伸ばすと、少し先の信号が青になるのが見えた。 僕が渡るころには赤になるかもしれないと思い少しスピードをあげる。 そんな図書館までの道すがら、頭の片隅では、昨日のことを思い出していた。 昨日の昼前だったか、姉から電話があった。 姉は現在大学三年生で、地元から離れて一人暮らしをしている。 電話があったころ、両親は今日と同じように仕事に出ていたので、当然僕が電話をとることになった。 大事な話がある、姉は電話越しにそう言った。 今晩家に帰るから親にそう伝えておいてくれ。 嫌な予感がした。
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