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彼らは礼の一つにしても、歩くにしても、余りある何かを持っているような動きをする。
下人には余裕がない。せかせかと働くから気性も動きも粗野になる。
妙児さんは本当に下人なんだろうか、と疑っていた。
部屋の中は、豪華とはいかずとも程々に質のよい調度品が幾らか揃えられているのでは、と障子の前に立った時、中のしつらえを想像していた。
しかし、今都季の眼前にあるのは、衣装箪笥と手許箪笥、そして妙児が向かっている文机のみ。
都季は、下人の所作を上流層の所作だと思ってしまったことに新鮮な驚きを感じた。
「何をしているの。
部屋に通されたら、先ず礼をするということも知らないのですか」
妙児は都季を見ることもしなかった。
書物をぺらりと捲り、そこに目を向けたまま威厳のある声を響かせた。
「あ、すみません。
都季といいます。どうか、ここで働かせてください」
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