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女将への挨拶を済ませ、医者の後に続いて廻廊を進んでいた時、そこで三人の見習いとすれ違ったのだ。その中央を歩いていたのが綾だった。
綾は医者に「その娘は?」と都季が何人(なにびと)であるかを訊いた。
そこで医者は「今日からここで働く下女ですよ」と答えた。
その瞬間、綾は何の前触れもなく都季の頬に平手を打ちつけたのだ。
その理由は、「下女なら道を空けて、端で頭を下げていなさいよ」だった。
ここでの下人は、一家の主に食わせてもらう外界の下人とは違い、その暮らしが支えられているのは娼妓らの稼ぎのお陰だった。となれば当然の如く、下人の給金も、娼妓らが体を張って稼いだ金から賄われていることになる。
故に下人が娼妓に逆らうことは許されず、また上級女候補である見習いにもそれは同様であった。
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