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雪美館の娼妓の数は、凡そ五十人。
見習いは小等と高等に分かれており、それをくるめれば凡そ三十人。
下人は、男女含めて凡そ四十人。
洗濯と言われた時は、皆の着物を何人かで洗濯すると思っていたのだ。
しかし、洗い場の下女が洗濯するのは着物では無かった。
着物の洗濯は、娼家担当の部屋付きと呼ばれる十人以上の下女が、三人ずつの交代であたることになっていた。
本来、部屋付きは娼妓の世話を中心としているものである。故に、洗濯をするのも娼妓の着物のみと思いがちだが、彼女らは人員に余裕があった為、手をこまねく者が出ぬよう下人や見習いも含めた全員分の着物を担当することになっていたのだ。
洗濯場といわれる持ち場は皆から敷布洗いと呼ばれており、娼妓と客が汚した生臭い敷布を洗う担当であった。それ以外の仕事はない。極めて辛い仕事であった。長時間屈み続けた結果、腰や膝を痛めて暇を出された者もいるほどである。
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