第2話

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部屋付きは「きっと女将様は、あの子を雇うつもりなんかないのよ」と囁いていたのだ。 そういう結論に行き着いたのは、都季の雇用には医者の口添えがあったのだろうと、二人が連れ歩いているのを見た数人が、口を揃えて話したからである。 医者と雪美館の付き合いは兼ねてより良好だった。 部屋付きらはそんなところから「女将様は先生を無下に出来なくて新入りを雇ったけど、本当は雇いたくなかったのよ。だから辞めたくなるように仕向けているんじゃない」と推測したのだった。 しかし余りに見兼ねたのか、部屋付きの一人は丑の刻(午前二時頃)を過ぎた頃に「これで最後よ」と都季を励ましたが、既にその頃には都季の意気込みはすっかり消え失せており、惰性のみで手を動かす抜け殻にと様変わりしていた。
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