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「それで、どう?
女将様と会ったんだよね?」
「うん……。
粗相と言われれば、あれかなっていうのはある」
「え、本当になにかあるの?
なにをしたの?」
都季は苦笑した。
薄々おかしいなと感じていたのだ。
ここには多くの下女がいる。下女の出発点が洗い場なら、洗い場以外の持ち場についている下女は皆、大量の敷布を毎日洗濯し続けて能力が認められたことになる。
その能力とはどれほど優れているのかと思い、都季は部屋付きが着物を洗濯している様子を目の端で観察していたのだ。
しかし、都季より手の早い部屋付きは一人もいなかった。余裕があるか、ないか、の差だろうかとも思おうとしたが、それにしても腑に落ちなかった。
***
粗相と聞いて都季が思い当たったのは、女将の部屋に通されてから直ぐの出来事である。
「よろしくお願いいたします」と、都季が平伏した瞬間、女将は「やり直しなさい」と低い声で言ったのだ。
やり方が悪かったんだろうか。
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