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都季は朧気に眼瞼をあけた。
先ず瞳に映ったのは、染みた天井である。
ここは……?
格子から伸びた陽光が、板張りの床に縞を作っている。どこか遠くのほうで、琴の音と笑声が響いていた。
寝ていた場所は、憧れてやまなかった布団の中だった。
記憶は微かだが、燕麗が自分の頭を踏みつけたことは覚えていた。幾度も憎悪のこもった足が落ちてきた。
いつから降っていたのか、地面は雨に濡れていた。水溜まりに打ち付ける雨が泥を跳ねさせていたのを、鼻先で見た。
燕麗と二人の男が遠ざかっていくのを双眸に映しつつ、ああ、このまま死ぬかもしれない、と思っていた。
しかし、死ななかった。
「痛……」
寝返りを打とうとした瞬間、胸と背中に鈍痛が走った。都季は横になるのを諦めると、首をめぐらせ周辺を見回した。
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