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部屋は六畳ほどの板の間だった。箪笥(たんす)を除いた調度品は一つも無い。出入口となる戸は、土間にある遣り戸が一つのみ。壁に塗り込められた土は、所々が剥げ落ちている。
古い家だなと思っていると、ガラリと遣り戸が開いた。そこに居たのは、都季と同じ年頃の、おだんご頭の娘だった。
「……せっ、せんせーい!
きき、気付きました。起きました!」
娘の名はシノといった。
この古ぼけた家は医院だった。
シノは遣いの途中で倒れていた都季を発見し、この医院に助けを求めたのだ。
暫くしてやって来た医者は、二十代くらいの若い男だった。彼は長い髪を横に束ねていた。着物の上に白衣をまとっていなければ、誰も医者だとは思わないような美形の男であった。
都季も彼の声を聞くまでは、女性かと思っていたほどである。
***
「ひとつ聞いておかなければならないことがあります。
あなたは月のものが始まっていますか?」
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