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都季は咄嗟に両手をつき、頭をさげた。
さげた後で、しまった、と思った。
別のことを考えていたせいで気が回らなかったが、この礼には何か問題があるのだ。
「もういい。頭を上げなさい。
女将様の仰っていた理由が分かりましたから」
「あの、理由って何ですか?
私の礼に粗相があったことは分かります。でも何が悪いのか分かりません」
都季は一度顔を上げたが、また頭をさげた。
「お願いします。私には行くところがないんです。ここで働きたいんです」
「お前は――」
都季は、恐る恐る顔を上げた。
「礼の仕方をどこで覚えましたか」
妙児の口調は穏やかだが、その眼光には得も言われぬ鋭さがある。
下品――。
都季は、そう言われた気がした。
「どこで、と言われても……」
「では問いを変えます。
お前は誰にそうやって頭をさげましたか」
誰に、の部分が強調されていた。
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