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「先月、始まったばかりで……」
都季は行動にこそ現さなかったが、その心のうちは狂乱していた。
穢された身で彩志に仕えられる筈がない。それどころか、高価な堕胎薬をどうやって買えばいいというのか。
都季は、貧乏な両親がなぜ自分を産んだのか、この時やっと分かった。堕胎するにも、まとまった金が必要になるからだ。
「先生、私をここで働かせてください。
掃除も洗濯も何でも出来ます」
何としてでも金を作らねば。
これまで気付かなかったが、両親は自分を大切に育ててくれたのだと初めて知った。欲しがったものを買ってくれたことは一度もない。我慢ばかりを強いられた。しかし、生活が苦しくても自分を殺さずに育ててくれたのだ。親の責任は全うしていた。
都季は、私は両親のようにはなれないと思った。あの男らの子が胎内に宿るかもしれないと考えただけで悍ましかった。吐き気がした。
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