第2話

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内股に違和感が残っている。 これまでの自分がなにか別のものに変化してしまったような気分であった。 いや、事実そうであったのかもしれない。 一時は死ぬことを考えた。自分が死ぬことで燕麗の悪事が露見し、彩志に離縁されればいいと思った。そうなれば燕麗は酷く後悔するだろうと。 しかし、つらつら思えば、燕麗が自らの罪を認めるとは思えないうえに、後悔するとも限らない。或いは邪魔者がいなくなったと彼女を喜ばせてしまうだけかもしれない。 それだけは許せなかった。人生はまだこれからだ。私は生き延びて燕麗に自分以上の苦しみを与えてやる、と都季は思った。 その心は怨恨の色に染まっていたのである。 *** 医者は、自分の元で都季を雇うつもりはないと言った。そこを何とか、と都季は頭を下げた。両親はいないと嘘をついた。 奉公先があるのだと知られれば、医者は両親に全てを話し、治療費を要求すると思ったからだ。
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