第2話

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「辛い仕事でも堪えられますか」 医者は、都季の必死な様を見てそう訊いた。 「勿論です」と、都季は答えた。 医者は都季に遊廓の下仕事を紹介した。 そこは遊廓の中でも一番大きな敷地を持った、雪美館(せつびかん)という座敷遊び専用の高級娼館で、更には敷地内に棟を別に設けた娼家と茶屋、他にも諸々の建物があった。 都季は、医者に連れられて雪美館を訪れた時、医院で聞いた琴の音色はここから聞こえてきたものだったのかと思った。 医院は雪美館と隣接していたのだ。 まさか自分が遊廓にいたとは。 遊廓はぐるりを川で囲まれていた。 分岐した大河が合流するまでの区間に、そこはあったのだ。 都季は幼い頃に一度だけ見た、大門へと続く石橋を思い出していた。
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