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それは平行積みにされた壁石が美しく磨かれており、木造の欄干には紅の塗料が塗られていた。大層立派で、華やかだった。
幼心にも、あの向こうは楽しそうだ、と別世界への興味心をくすぐられたものである。
その石橋を初めて渡るのだ、と緊張に似た高揚心がいくばくかはあった。
拍子抜けとは、正にこのことであろう。
いや、しかし運が良かったのだ。
優しい先生のお陰で、こうして仕事を紹介してもらえた。と都季は半ば強引に現実を見つめて気を取り直したのだが、事実を言えば、彼がそうしたのは自分の為である。
彼は雪美館の女将から、ちゃっかり都季の治療費を受け取っていたのだ。
都季がそれを知ったのは、一月後の給金日であった。
他の下人らは給金を貰っているのに、都季は「お前の給金は借金にあてた」と言われ貰えなかったのだ。
金を作らなければならないのにどうすればいいのか、と一時は頭を抱えることになるのだが、しかしこの時は何も知らず、ひたすら医者に感謝した。
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