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投稿用紙をじとーーーっと
眺めていると、用紙の上部に
にょきっと現れる人差指。
紙の上辺に指を引っ掛け、
くい、と下に引かれると、
用紙は向こう側にくにゃり、と
頼りなく倒れた。
向かいの席に座る
春山先生のニコニコ笑顔が
丸見えになり、わたしは少し
むっとして、
用紙をトントン、と揃えた。
「椎名」
「……はい」
「機嫌悪いの?」
「いいえ」
わたしは思い切り
機嫌の悪い声で答え、
再び用紙を顔の前で
立ち上がらせ、先生の
視線を阻んだ。
放送部室の西側の窓からは、
斜めに夕日が差し込み始めていた。
わたしと先生が
向かい合うテーブルの半分は、
すでに夕日で浸食されたように、
紅く染まっている。
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