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「やあ君、丁度良い所に来たね!これから僕と一緒に例の密室からのジュエリー盗難事件の現場検証に赴かないかい?」
「断る」
清掃は行われているものの、どこか埃と古書の臭いが漂うような図書館の一角。
新聞片手に回転椅子に緩く腰掛けるディーネ・クローカーと巻物状の古書を大量に担いだバルナバ・ゲルハートは、互いに一瞬刺混じりの視線を交錯させた。
「何故だい?」
「興味無いから」
「勿体ないよ、手に入る情報を見聞もせず遮断してしまうのはね」
「今俺が手に入れたい情報は、この書物の内容だけだ」
そういい放ち、彼女に背を向け手近なテーブルの上に数冊平行させるように巻物を広げる。
「ふーん、じゃしょうがないか。読みながらでもいいからとりあえず聞いててよ」
「…今日はいやにしつこいな。何を企んでる」
意味不明な独り言こそ多いもの、ディーネが本と未確認生物及び飛行物体以外の事でこんなに人と会話を続けようとする事は相当レアである。
「やだねぇ、単純にこの事件が凄く良く出来ているから話したくなっただけだよ、話が分かる誰かにね」
「聖職者が嬉々として犯罪話を聞くと思うのか?」
そう言いつつもバルナバは自らその場を離れようとはしない。
「君も大変だね、別に良いよ、表向きはそういう事でも」
そう皮肉げに呟き、ディーネは彼の背に向かってわざとの様にのんびりと語り始めた。
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