シーン5

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 兄貴を頼りにしていた僕が馬鹿だった。  放課後、宇宙人がバイトをしているというコンビ二を目指していた僕達だったが、どうにも辿り着ける気がしない。先を行く兄貴の背からは、道に迷ったオーラが溢れ出ていた。  オドオドしている兄貴には引き続き迷い続けてもらい、僕は現在に至るまでの回想に移ることにしよう。  説明するのなら、五限目の途中に届いた桜子さんからのメールからがいいだろう。僕は教科書を立てて手元を隠し、いつものように二礼二拍手からの合掌。最後にもう一礼してからメールを開いた。ちなみにこれは、桜子さんからのメールを開く際の作法だ。  メールの内容は、急な仕事が入り早退するので部活に参加できないということ。人気モデルの彼女が今日のように早退したりすることは、月に数回はあることなので珍しいことじゃない。  よくよく考えたら、兄貴は放課後宇宙人を『いい物件』とやらに案内するとか言ってたことを思い出した。あのコンビを二人きりで街に放すのは不安なので、僕も同行すべきだろう。春重はまたしばらく部活に参加できないだろうし、ヤマンバは帰省中。残ったのは宗太郎だけとなる。  となると、今日の部活は中止だ。  放課後にその旨を宗太郎に伝えたところ、自分も宇宙人の物件探しに同行したいと言い出した。コイツは多分、兄貴と一緒にいたいだけなんだろうなとは思いつつ、断る理由もないので僕ら三人は揃って宇宙人のコンビ二へと向かうことになったんだ。回想終了。  そして現在、ご覧の通り迷っている。 「兄貴って昔から方向音痴なところあるよなー」 「ちげーよ! ィヲェスッァフヴの描いた地図がわかりにくいんだ!」 「どれどれ、見せてみろ」  しかめっ面の兄貴から地図を受け取り、目を通す。まず文字という文字が見たことない形をしている。あれだけ日本語を流暢に話せるくせに、書く方は駄目なのか宇宙人。  道路らしき絵は理解できるんだが、目印を示すべき周囲に描かれているのは、花とか犬らしき動物とか蝶とかお星様だけ。そんなファンタジックな街に住んでいる覚えはない。そして何より、目的地の印がない。よってこれは地図ではない。落書きだ。 「いやいやいや、何を根拠にここまで来たの!?」 「勘だ!」 「胸を張って言うことじゃない!」    何てこった。これじゃあ街中のコンビニを駆けずり回らないと宇宙人には会えないぞ。
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