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盗み聞きをするつもりはなかったんだけど、会話の声が自然と耳に入ってくる。
「安心しろスティーブ。誰にもあの宇宙人が本物だなんてバレちゃいない。日本には『木を隠すなら森の中』という言葉がある。コンビニで本物の宇宙人がバイトしているだなんて、誰も思うまい」
……ん? 何だこの会話?
「アメリカへはこちらで生態の研究をじっくりさせてもらった後に送る。何、もっと早くだと? フフッ、NASA本部はせっかちだな。どのみち今はジュウェヲンスァッヌェ星人の人体実験やピラミッド型UFOのデータ解析で手が一杯だろう? ならばしばらくはこちらで預からせてもらう。ボスにもそう伝えといてくれ」
なんてこった。何故僕の周囲にはこうも次々と訳わからん奴らが出てくるんだ! あの店長、人柄の良さから宇宙人を雇ったんじゃなくて、本当は研究した後にNASAへ引き渡すのが目的だったのか。
さっきメッチャ極秘情報っぽいこと喋ってたし、店長自身もNASAの人間だと考えられる。このままだと宇宙人が危険かもしれん。僕はどうすればいい? どうすれば……。
よし。聞かなかったことにしよう。
そそくさとその場を離れようとした僕であったが、後頭部に何やらヒンヤリした金属のような物を突きつけられて足を止めた。膝が笑い歯がガチガチと鳴り、冷や汗が全身から溢れ出る。
「少年」それはあの朗らかな店長からは想像も出来ないほど、渋く迫力のある声。「今の話、聞いたな?」
「聞いてません聞いてません!」
「素直に言え」
「聞きましたァ! すんませんすんません!」
駄目だ! このパターンは、知られたからには生かして帰すわけにはいかないってアレだ! 殺される……ッ!
「そう震えるな。殺しはしない」
「ほほほほ、本当ですか?」
「あぁ。ただちょっと、口止めをさせてもらうだけさ」
言って店長は、僕の後頭部に突きつけていた物を退けた。思わず安堵の溜息が漏れたのも束の間、今度は何かに頭を鷲掴みにされた。
「なはぁッ!?」
上を見ると、何だかわけのわからない機械が僕の頭にくっついていた。外そうとしても外れない。そして機械からは沢山の管が生え、触手のようにクネクネ動きながら僕の耳や鼻や口元に伸びてきた。
「うわぁぁぁッッ! 嫌だぁぁァァッ!」
「安心しろ。すぐに終わる」
「たっ、助けてッ! 兄きっ――……」
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