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◇
「ココハドコ? ワタシハダレ?」
「ここは不動産屋でお前は三途川友希だ。大丈夫か?」
気がつくと僕は知らない場所で椅子に座っており、目の前にはお茶が置かれていた。妙に頭が痛い。それに鼻の穴や耳の穴、喉の奥もヒリヒリする。まるで管でも突っ込まれた後みたいに。
右隣には宗太郎がいて、左隣には兄貴と宇宙人がいる。兄貴曰くここは不動産屋らしいのだが、僕はここまで来た経緯を全く思い出せない。思い出せるのは、コンビニの外で野良猫を追いかけていたところまでだ。
「宗太郎。僕、ここまでどうやって来たっけ?」
「どうって、普通に歩いてだろ?」
「僕、自分の足で歩いてたか?」
「ああ。でも話かけても何も答えなかったし、何か変だったぞ」
うーん。白昼夢でも見てたのだろうか? 不思議だな。それに何だろう。何かとんでもないことを忘れてしまっている気がする。
一人頭を悩ませていると、頭が禿げて中年太りしているオジサンが僕らの前に現れた。向かい側の席に腰を下ろすと、手に持っていたクリアファイルから間取り図を取り出しテーブルの上に置いた。
あーそうか。宇宙人の物件探しが目的だったんだっけ。
「こちらが一階で、ここから上がってこちらが二階。築二十年で四DKの借家です。ついでに言うと、家具家電何かは前の入居者のがそのまま残っていますので、そのまま使っていただいて結構です」
「な! 俺が言った通りいい物件だろィヲェスッァフヴ?」
「でも、やっぱり高いんじゃ……」
宇宙人の言う通りだ。一人で住むには贅沢すぎるし、予算オーバーは容易に想像できる。
「ご安心くださいお客様。敷金礼金なしで家賃一万円ポッキリ」
そんな僕の予想は、大幅に裏切られた。
四DKが一万円? 風呂トイレなしの四畳半アパートでももっとするぞ。何か安い原因があるはずだ。立地条件が物凄く悪いとか、建物が腐ってて倒壊寸前とか、窓ガラスが全部割れてるとか……いや、他にもっと現実的な可能性がある。
「この物件、写真とかってありますか?」
「外観だけでしたら」
提示されたのは、今ひとつパッとしない和風住宅。僕はこの家を知っている。僕のみならず兄貴も宗太郎も、特に桜子さんは間違いなく知っていると思う。
何故ならこの家は――地元では有名な曰くつき物件だからだ。
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