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「友希さん。一つ聞いてもいい?」
「何だ?」
「この家が曰くつきだとか聞きましたが、どういう意味です? この家は汚れてますけど綺麗に掃除すれば全然住めますし、家具家電も付いててお得だと思うの。なのに家賃が格安なのは、その『曰くつき』というのが原因なんですか?」
やはりわかってなかったのかこの子。うーん、どう説明すればいいんだろうか。
「えーと……幽霊ってわかるか?」
「わからない」
「じゃあ、宇宙人の星じゃあ人が死んだ時どうしてた?」
「悲しんで火葬して墓に入れます。この星でも同じじゃないの?」
「同じだけど、この星では未練とかを残して死んだ人が別の形で現世に現れることがある。それが幽霊だ。半透明だとか、足がないだとか、人魂だとか、パターンはいくつかあるみたいだけど」
「何それ……怖い」
わかってもらえたみたいだ。でもこれで宇宙人を僕と宗太郎が属する『お化け怖い派』に引き込んでしまったことになる。迂闊だったな。
「友希さん……ワタシ、怖い」
ギュッ。
異性人に腕組まれたんですけど。何だこのラブコメ展開。欠片も萌えねーぞオイ。
とは言っても、恐怖に慄く女の子の手を振り払うほど僕はクズじゃない。引き続き竹箒で蜘蛛の巣を巻き取りながら、僕らは二階を目指した。
◇
到着した頃には、竹箒は巻き取った蜘蛛の巣で綿菓子のようになっていた。キモッ。
相変わらず僕の片腕を独り占めしている宇宙人と共に廊下へ出ると、二階の造りがおおよそ理解できた。両脇に二間。奥の扉はトイレだろう。部屋数が少なくて助かった。これなら散策もすぐに終わりそうだ。
「宇宙人、どっちから行く?」
「じゃあ……右」
仰せのままに、右の襖に手を掛けた。瞬間、脳裏に曰くつきとか幽霊とかそういったワードが過ぎるが、女の子が側にいる以上僕にも男の意地がある。例えその女の子が、恋愛対象圏外のグレイでも。
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