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「よし、いくぞ!」
意を決して、立て付けの悪い襖を開き和室内へと足を踏み入れる。この部屋も埃まみれで蜘蛛の巣だらけ。おまけにゴミ等様々なものが畳の上に散乱していた。果たしてこれらは住み着く幽霊が生前に使っていたものなのか、入れ替わりが激しかったという入居者のものなのか。それとも、若者が勝手に侵入して飲み食いしながら肝試しでもしたのだろうか。
「友希さんッ!」
「うわっ! い、いきなり大声出すなよ!」
「だって……アレ」
ビクビクと怯えながら、宇宙人が僕の後ろを指差した。ああ、わかりますとも。振り返るとそこに幽霊がいるって展開だろ? だから僕は、振り返らないという選択をする。
「ほら! 見てくださいってば!」
「自ら墓穴を掘るような愚かな真似、僕ほどの熟練したビビりならしないのさ。さぁ、兄貴達を呼びに行こう」
自分でビビりって言っちゃった。まぁいいか。
「いいから見て! 何か変な物があるのよッ!」
「へ……変な物? お化けじゃないの?」
「ワタシはお化け見たことないからわかんないけど、違うと思う」
何だ違うのか。ビビって損したな。
この部屋は相当ゴミが散乱してるから、宇宙人が見慣れない変わった物を見つけただけのようだ。それなら臆することはない。僕は悠々と身体を捻り振り返った。
――首吊りのロープが天井から下がっていた。
「ふおぉぉぉォォォッ!」
人間、本気で驚くと変な奇声を上げたりするもんだな。とか脳内で冷静気取ってる場合じゃねぇ。これはどう見ても、ここの元住民が自殺の際に使用したポピュラーなアイテムに違いない。
「どうしたの!? 何なんですかあの紐は?」
「見ればわかるだろッ! 首吊りのロープだ!」
「えっ! でもでもっ、首吊りロープの輪ってもっと大きいはずじゃないですか!」
「お前の住んでた頭でっかち惑星を基準に考えるな!」
このタイミングで開かれる押入れの襖。中の二段目には、白装束の女性。真打の登場に、僕は無我夢中で宇宙人に抱きついた。
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