シーン5

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「キャッ! や、やだ友希さんっ! そんな急に……こ、困りますぅ!」 「アホかッ! 幽霊出てんだよ気づけって!」  幽霊は這うようにして押入れの段の上から降りる――のではなく、ハイテンションに飛び降りるとこっちに向かって駆けてきた。顔メッチャ怖い! メッチャ青白い! 「地縛霊・首崎仁美(くびさきひとみ)、七十七の脅かし技の一つ・ローリングうらめしやー!」 「ぎぃやぁぁぁッ!」  前転からのうらめしやに甲高い悲鳴を上げ、僕は宇宙人を放り出して部屋の隅まで逃げた。幽霊は僕に勝ち誇った笑みを見せると、次はお前だと言わんばかりに攻撃対象を僕とペアを組んでいた少女に変更した。僕に熱烈アプローチをされたと勘違いしてくねくねしていた宇宙人も、流石にここで幽霊の存在に気づいた。というか、普通に目視できるんだな。 「次はアナタの番よ! 七十七の脅かし技の一つ・金縛りサイクロ……う、宇宙人だぁぁぁッ!」 「ひぃあぁぁぁっ! 幽霊だぁぁぁァァァッ!」  互いにとって未知との遭遇。宇宙人には幽霊の怖さを教えてあげたばかりだし、幽霊もまさか我が城に宇宙からお客さんが来るとは思ってもみなかっただろう。何だろう。怖いけど面白い。 「あ、アナタがここを曰くつきにした悪霊ね! ここにはワタシが住むの! 悪いけど出てって!」 「ふふふ、面白いわ! こっちもだてに十年間地縛霊やってないのよ。我が七十七の脅かし技の前に散るがいい!」  そして開戦。宇宙人が龍、首崎仁美という名前らしい幽霊が虎のオーラを放出して威嚇し合っている。一体どんなバトルが始まるのかと不謹慎にもワクワクしていた僕だったが、途中で横槍が入ることとなった。勿論うちの兄貴だ。 「ィヲェスッァフヴから離れろ!」  言葉と同時に放たれた塩爆弾は、地縛霊に直撃したと思いきや身体をすり抜けて部屋の奥で壁に当たり破裂した。塩自体は霊にとっても効くのだが、ビニール袋に包まれている状態の塩爆弾では幽霊と塩が直接接触しないためにすり抜けてしまったようだ。苦労して作ったのに、欠陥品じゃないか。
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