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「ぐうぅぅぅ! な、何だその炎は! 苦しい……ッ!」
……え? 効いてる? 守護霊様万歳!
「ふはははっ! ひれ伏せ悪霊めぃ!」
青白く燃える西田を突き出すように持ち、僕は悪霊に近づいていく。当初はなるべく幽霊に近づかないようにするというプランだったが、ここまで優勢なら話は別だ。何がローリングうらめしやだ。今思うと馬鹿馬鹿しい。
距離を詰めるに連れて地縛霊の力は弱まり、ポルターガイストで宙に浮いていたゴミも次々と地面に落ちていく。勝負ありだ。見たか! 僕の守護霊の力!
「おのれぇ、そのようなウンコにやられるとは」
「ウンコじゃない。ジャンボタニシだ」
西田への無礼を正したところで、皆も僕の側に集まってきた。
「やるじゃねーか西田。流石は俺が名付けただけはあるな。うんうん」
「こりゃあ将来はゴーストバスターで決まりだな友希」
「人の夢をお前が決めるな」
そんで、問題はこれからどうするかだ。
畳の上で力なく倒れ込んでいる地縛霊・首崎仁美。直接塩をぶっかけりゃ退治はできるだろうけど、それもなんか気が引ける。女性だしな。
「よし、俺が話す」と兄貴が一歩前に出た。
「わりーけど、ここはもうアンタの家じゃない。そんで今日からィヲェスッァフヴが住むんだ。そろそろ成仏してくれないか?」
「無駄よ。私にはまだ未練があるもの。成仏なんてできないわ! それに地縛霊だからこの家から出ることも不可能よ!」
「なら悪いが、力づくでいかせてもらうぜ」
兄貴の口調はいつもの軽い雰囲気とは違い、重々しかった。多分兄貴は割り切っているのだろう。兄貴は生まれた時から幽霊が見えていた。それ故に幽霊と触れ合う機会は多かっただろうし、良い幽霊も悪い幽霊も沢山見てきたんだろう。そうして知ったんだ。皆揃って仲良くとはいかない。相入れない者もいる。人間社会だって同じだ。
相手は悪霊。害を成す存在。正義感の強い兄貴が、男前にも今回は情け容赦なくいくという選択をした。仕方のないこともある。しっかりとその決断ができる兄貴は、やっぱり何だかんだで僕より大人なんだよな。
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