シーン5

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 いつの間にやら我らが守護霊・西田様の青白い炎は鎮火していた。エネルギー切れかとも思ったが、多分幽霊、いや、首崎仁美さんを悪霊と認識できなくなったのだと感じた。何となく。  こうして、宇宙人と地縛霊の奇妙なルームシェアが始まったのだった。  ◇  放課後の生徒会室。見事なスキンヘッドをつるりとかき上げた生徒会長・里見春重は、幼なじみの友人達が悪霊と一戦交えていようとは夢にも思わずに、テキパキと仕事をこなしていた。  今日も彼を除く生徒会メンバーは皆適当な理由で帰ってしまったため、室内には春重一人しかいない。 「あっと、もうこんな時間か。今日はこのくらいにしておこうかな」  窓の外の夕焼けを見てから壁掛け時計に目を移し、帰りの準備を始めた。ノートや筆記用具を纏めて鞄に詰めようとしたところで、彼は「あっ」と言葉を漏らした。 「しまった。父さんからコレを友希君に渡すよう頼まれていたんだった。まだ部室にいるかな?」  鞄の中にあるそれを目にして父からの頼まれ事を思い出した春重は、足早に生徒会室を出た。きっちりと施錠していざ部室棟に向かおうとしたところで、見るからに怪しいサングラスに制服の男達が彼の前に立ち塞がった。 「どうも、生徒会長の里見春重君」 「キミ達は確か、犬鳴桜子非公式ファンクラブだったね。私に何か用かな?」 「あぁ、とても大切な用がある」  不適な笑みを浮かべる非公式ファンクラブの面々。その長であるナンバーワンと呼ばれている男子生徒が、用件を春重に突きつけた。 「悪いがキミには、我々の人質になってもらう! 抵抗はやめたまえ。暴力は嫌いなのだよ。恨むのなら幼馴染みの三途川友希を恨むのだな! さぁ、大人しく従うんだ!」 「うん。いいよ」  悩むことなく春重は一瞬で承諾した。馬鹿ではなく、人が良いだけ。いや、やはり馬鹿なのかもしれない。
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