シーン6

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「今日は出前でも取るかな」  隣をだらだらと歩いている宗太郎に聞こえるか聞こえないかくらいの声量で、僕は一人呟いた。掃除で疲れたから料理する気も起きない。それに、今夜は家に一人なんだ。多少横着したって、兄貴にグチグチ言われる心配もない。  ……ちょい待てよ。今夜は一人きりって、超怖いんですけどッ! 「なぁ、今日はうちに泊まらないか?」  慌てて尻を押さえ、後退りする宗太郎。何だそのリアクションは。とんでもない誤解をされている。 「宣言しとくが、僕は例えお前の外見が望ちゃんレベルに可愛くなっても手を出さない自信がある」 「へっ、忘れたとは言わせないぜ。お前が自宅で俺のズボンとパンツをひっぺがし、息を荒立てながら俺の可愛いお尻を舐め回すかのように凝視したことを! こっちには目撃者だっているんだからなっ!」 「アレはお前が本当に尻目とかいう妖怪なのか確かめるための苦肉の策であって、断じて変態的思考でひっぺがしたんじゃない」 「どうかな。友希からはマスターと同じ臭いがプンプンするぜ。ひょっとして、お前あのOKM48(おかまフォーティーエイト)のメンバーなんじゃないか?」 「馬鹿らしい。てか何でオカマとホモが同一化されてんだよ」  宗太郎が言ったOKM48というのは、いわゆる都市伝説だ。べっぴんオカルトマニアな桜子さんから聞いた話なんだけど、この街に暮らす四十八人のオカマで結成された謎の組織なんだとか。この街のオカマ人口がどのくらいかなんて知らないけど、もし仮にそんな組織があるならまず間違いなく喫茶マオカのオカマスターはメンバーに入ってそうだな。しかも幹部とかで。  おっと、話を反らされるところだった。  はてさてコイツをどうやってうちに泊めようか。まぁ、本日地縛霊相手にかつてない大活躍を見せた西田がいるのだから、大丈夫だとは思うんだ。いざとなればウンコファイヤーで悪霊を倒すこともできる。ちなみに、ウンコファイヤーというのは西田が青白い炎を出して燃えるあの技のことだ。無論、命名は兄貴。ネーミングセンスの酷さに磨きがかかってる。  そんな守護霊様でも、見てくれはただのタニシだからな。やはり身近に人がいるという安心感には変えられない。と言っても、宗太郎は半分しか人じゃないけども。  仕方ない。奥の手だ。
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