33人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
僕を落ち着けようと、一体何処に隠し持っていたのかわからない大量の塩爆弾を取り出してみせた。反射的にそれを奪い取り、テレビへと投げつける。
「うおぁぁぁッ!」
「ゲフッ! ちょっ、やめろって!」
テレビから聞こえる苦痛の声。効いてる! いけるぞ!
「くたばれ悪霊! うりゃぁぁぁ!」
さらに投げる量を増やしたその時だった。塩爆弾のうちの一つが、割って入った桜子さんの右肩辺りに被弾してしまった。これには流石に手を止める。
「あっ、ゴメンよ桜子さ」
「部長! 幽霊さんが可哀想じゃないですかッ! アホ!」
マジギレされた。本気で凹む。
「大丈夫ですか幽霊さん。お怪我はありませんか?」
「すいません。大丈夫。軽く消滅しかけた程度だから」
画面の向こうで申し訳なさそうに礼を言っているのは、二十代後半くらいの男。少し太り気味の丸顔でスーツ姿。パッと見たところでは、真面目な印象を受ける。どうやらいきなり画面に張り付いて登場した男と同一人物のようだ。最初からそうやって程よく画面から離れた状態で登場しろよ。
「あ、自分ヒデオっていいます」
呪いのヒデオで正解だった!
「あのー」キラキラとした目で、桜子さんが尋ねる。「やっぱりこのビデオ観た人って、呪われたりしちゃうんですか?」
嬉しそうだなオイ。
「そういうのないんで安心してください。呪われてるのは自分の方なんで。この通り、呪いでビデオテープに封印されてるんだよ。ははは」
笑うところなのかわからないが、とりあえず今のところ実害はなさそうだ。呪われないと判明して万々歳な僕と違い、見るからに不満げなのが桜子さん。だが、ふとした瞬間目に光が戻り再びヒデオという名の幽霊に口を開いた。
「じゃあじゃあ、画面から出てこれたりするんですか!? これはもうお決まりのパターンですよね?」
「まぁ、できるけど」
できるんかい。
最初のコメントを投稿しよう!