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そして早速出てくるヒデオさん。ブラウン管でリアル3Dテレビが観られるとはな。だが本家のように上半身からズルズルと出てくるのではなく。足から先に出て足元を確保してから上半身を引っこ抜いた。
こうしてビデオデッキ研究部部室に出現した幽霊。普通に足があるのには驚いたが、身体は微妙に透けている。そして成人男性にしては背が低い。いや、全体的に縮小していると言った方が正しいかな。
「えっと、ヒデオさん。何か身体小さくないすか?」
一応敬語を使う。年上だし。
「仕方ないって。二十型テレビじゃこんなもんだよ」
画面サイズで出てくる大きさが変わるのか。ちょっと面白いな。つか、何ちゃっかり幽霊と普通に話してんの僕?
確かに最初こそ取り乱したけど、見た目も普通だし怖い要素は見当たらない。血だらけでもなければ白装束でもなく、透けてる以外は普通の人間と変わらない。
そういえば、前に兄貴がお婆さんの幽霊をおんぶしていたことがあったっけ。思えばアレが始めてみた幽霊だったんだけど、あの人も透けてる以外は普通のお婆さんだった。怖がりすぎだよな、僕。謝らないと。
「その……さっきは塩投げつけてすいませんでした」
「いいっていいって。自分もやり過ぎたし。そこのお嬢さんがホラーをご希望だったみたいだからはりきってみたんだけど」
今度は桜子さんが申し訳なさそうにする番となった。そして僕にキレたことを素直に謝罪する。どっちもどっちだからいいんだけど、何か変な空気になってしまった。
そんな空気を変えるのに最適なのが、空気読めない兄だ。
「それでさ、何でヒデオはビデオに閉じ込められてんだ?」
うん。もっともな疑問だ。
「深い深い事情があってね」
「ん? でもテレビから出られてるじゃん。これで呪いのビデオから解放されたことになんじゃねーのか?」
「それがね、五分以上出たままだと消滅しちゃうんだなこれが」
言いながらヒデオさんは僕らに自分の手を向けた。指先がシュワワワーって感じで消滅していってる。
「というわけで、戻らせてもらうね」と彼は再びテレビの中へと戻っていった。
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