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「可哀想。せっかくのパーティーなのに」
「私のことは気にしなくていいですから。こうしてるだけで楽しいし」
笑って見せるも、宇宙人の悲しげな表情は変わらない。ここで動いたのが愛希だった。
テキパキと皿に料理を盛ると、それを仁美の前に置く。そして仏壇からお鈴を持ってきた。叩くとチーンと鳴るアレである。それを皿の隣に置き、鳴らしてから手を合わせた。すると、仁美の身体に変化が現れた。
「……アレ? 味がする! なんで!?」
「お供えだよ。幽霊はこうされることで味覚を感じられるんだ」
「料理の味なんて十年振り! 何で愛希さんはそんなこと知ってるの?」
「そりゃあまぁ、一回死んでるからな」
この発言には、宇宙人と幽霊両者とも唖然とした。わけがわからないと言いたげだ。それはそうだろう。なので仕方なく、愛希は自分の事情を話して聞かせることにした。
「へー。それで随分と男勝りなのね」と、宇宙人が感想を述べた。宇宙人が知っていた情報は愛希に命が二つあるという部分だけだったらしく、友希の兄から妹に転生したということは今初めて知ったようだ。
「きちんと成仏すると、そういったサイクルに取り込まれるんですね。私、地縛霊だから知りませんでした」
「ま、俺みたいな存在はイレギュラーらしいけどな。前世の記憶を留めるのみならず、命を二つ持ってるのはこの世界で俺だけなんだぜ!」
「愛希……今更だけど、それって幽霊相手に話していいことなの?」
しまったと口元を押さえたがもう遅い。愛希の命のうちの一つはキスにより相手に移動する。幽霊とキスを交わしたのなら、その幽霊は生き返ることができるわけだ。
だがそれは、別に愛希にとっても悪いことではないのかもしれない。仁美は良い幽霊であるし、生き返らせてあげたい気持ちもないわけではないのだ。そうすれば愛希がオカルトな連中に狙われることもなくなり、平穏な日々を取り戻すことができる。
それだけの利益がありながらも、愛希は躊躇っていた。理由は簡単。キスなんて生まれてこの方したことがないから、恥ずかしいのだ。しかも中途半端に男の心が混じっているため、女同士だからと割り切ることもできない。
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