30人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
「私は生き返るつもりなんてありませんよ」
救いの手を差し伸べたのは、仁美本人であった。
「自らの手で命を絶った分際で生き返ろうだなんて、虫が良すぎます」
「そっ、そうか。俺はキスくらい全然平気だったんだけどな」
今更な強がりにクスリと小さく笑うと、仁美は遠くを見るような目で天井を仰いだ。
「……それに、一人で生き返ったって仕方がないもの」
「ん? 何か言ったか?」
「ううん。さぁ、食べましょう! ピザをお供えしてもらっていいですか?」
「あ、今度はワタシがやるわ。そのオソナエっていうの」
こうして、女三人の楽しい夜は更けていく。
◇
ピザ食ってゲームして、男二人の虚しい夜を過ごした僕と宗太郎。春重は何故か電話に出なかった。アイツは生真面目だから出ないはずがないんだけどな。何処かにでも落としたんだろうか。
「さあさあ、愛希ちゃんの部屋に案内してもらおうか!」
風呂上がりの宗太郎がソファーで寝転がる僕を仁王立ちで見下ろした。そういえばそれを餌に泊めたんだったな。さて、どう誤魔化すか。
「もう寝るのか? まだ九時だぞ」
「俺は良い子だから毎日九時に寝るんだ。さぁ、早くっ!」
どうやら案内する他なさそうだな。宗太郎を引き連れ二階へ向かいながら、僕は策を練った。
三途川家の二階にある居室は、子供室が二部屋に夫婦室が一部屋。両親が共に単身赴任中なので、夫婦室が兄貴の部屋だと偽り泊めるのがてっとり早い。だが、いくら馬鹿の宗太郎とはいえ流石にバレそうだ。生活感が全くない部屋だからな。ベッドぐらいしか置いてないし。
となると、答えは一つだ。本当は嫌だけど、コイツを兄貴の部屋に放つのはもっと嫌だからな。
「兄貴の部屋はここだ」
そう言って開いたのは、僕の部屋の扉。
「ここが愛希ちゃん禁断の花園かぁー。やっぱり部屋も男っぽいんだな」
そりゃあ正真正銘男の部屋だからな。
最初のコメントを投稿しよう!