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シーン6 #2
「うちに泊まるなら、寝室は兄貴の部屋を使っていいんだぞ」
「交渉成立だ」
物凄くいい笑顔で握手を求められたので、とりあえず握り返した。勿論本当に兄貴の部屋を使わせる気はないけど、まぁ何とか誤魔化せるだろ。馬鹿だし。
「じゃあ今夜はピザでも取るか。兄貴達はパーティーだし、こっちもそのくらいはしないとな」
「おぉ! 羽振りがいいねぇ」
「言っとくけど、割り勘だからな。そうだ、春重も呼んでみるか」
こうして僕の家でも、ささやかなパーティーの開催が決定した。何のパーティーなのかと聞かれると、答えに困るからやめてもらいたい。
◇
「えー、それではィヲェスッァフヴの引っ越しと、首崎仁美の悪霊化終了を祝って、この三途川愛希が僭越ながら乾杯の音頭を取らせていただきます。では、かんぱーい!」
「かんぱーいっ!」
「乾杯」
この度久方ぶりに明かりが灯った元幽霊屋敷。表には『佐藤』と書かれた偽名の表札が掛けられ、道行く人々が驚愕の表情で借家を睨みつけている。
そんなことはお構いなしの室内。ダイニングキッチンは折り紙等で作った装飾品で彩られ、テレビの裏側に位置する壁一面には『おめでとう首崎仁美さん。おめでとうギウェィアノェウヲッァエゥ・ヴェィナレェィァアスヌ・ェヴェヲ・ィヲェスッァフヴ』と書かれた布が飾られている。
愛希、宇宙人、そして仁美の三人はジュースの入ったコップを飲み干し、パーティーは開始された。テーブルの上にはオードブルや寿司やピザ等がところ狭しと並べられており、愛希達の箸を迷わせている。
「何かわりーな。言い出しっぺの俺が一銭も出さずにこんなご馳走頂いちまって」
「いいんですよ。生前に隠していたへそくりを見つけてくれたのは愛希さんなんてすから。他に使うあてもありませんし」
ファーストコンタクト時の悪霊っぷりが嘘のように抜け落ちている仁美が、愛想良く微笑んだ。
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