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戌の刻(20時頃)
いつまで経っても『屋敷』へ戻ってこないハチを心配して源治が永代橋までやってきた。
「まったくハチの奴、どこで油売ってやがるんだ。見つけたらただじゃ置かねえからな」
そんなことをいいながら永代橋を渡りいつもどおりまっすぐ深川の町へ向かおうとした時、暗がりのなか、川沿いに人だかりが出来ているのが目に入った。
「ん? なんだ」
源治はその人だかりのほうへ近づいていき集まっている人々に声を掛けた。
「おい、どうした」
「源治親分ちょうどよかった。ハチさんが倒れてるのを見つけたんだ」
源治が集まっていた人々を掻き分け前のほうへ行くとそこに気を失って倒れているハチを見つけ慌ててハチに駆け寄った。
「おいハチ、しっかりしろ」
源治が平手でハチの頬を張りながら大声で呼びかける。少ししてハチが意識を取り戻し始めた。
「んんっ」
ハチが大きく息を吸いそして吐き出すとゆっくり目を開いた。気が付いたハチに源治が呼びかける。
「ハチ、おい大丈夫か」
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