プロローグ

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 江戸城 内庭    小見が闇鬼の時雨を倒してから数日が過ぎ時季は霜降(そうこう)を迎えていた。源治達によってお駒の所に運ばれ何とか一命を取りとめた小見だったがいまだ目覚める気配はない。  吉宗はいつもどおり江戸城の内庭を歩いていると一陣の風が吹いた。すると、物陰に身を潜めるように一人の御庭番が現れた。 「銀駒か」 「はい。闇鬼の時雨との戦いで小見が深手を負い一命は取りとめたもののいまだ気を失ったまま。また、新大橋での鉄砲水騒ぎの一件で消えた奉公人の行方もいまだ掴めておりません」 「そうか・・・ところで風魔の行方は」 「申し訳ございません。そちらのほうもいまだ・・・」 「うむ、風魔は東照神君(徳川家康)の時代、随一の間者だ。そなた達御庭番であっても行方を追うのはそう簡単なことではないか」 「お役に立てず心苦しい限り」 「構わぬ気にするな。いずれにしても、小見が深手を負いしばらく動けぬことを風魔や闇鬼を裏で操る者も周知のはず。だとすれば必ずや近いうちにまた闇鬼達が動きだすであろう」
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