プロローグ

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「用向きは分かった。だが、その言伝が上様からのものと信じる根拠は」 すると銀駒は吉宗より預かった一本の刀を差し出す。山田はその刀を見たとき、言葉を発することこそなかったものの一瞬我が目を疑うほど驚いた。そんな山田の様子をじっと見ていた銀駒が口を開く。 「徳川家隠し刀『闇鬼切(くろぎり)』、上様からお預かりして参りました」 徳川家隠し刀とは、時の権力者達が闇鬼と戦うため作り出したいわば「闇鬼討伐専用」の一振りで、徳川家康が時の覇者となった時家臣に命じて探し出し徳川家の歴代将軍に極秘に受け継いだ刀であった。山田は御側御用という職柄、徳川家にある刀のことについてもかなり知るところがあり、『闇鬼切』は昔、吉宗に謁見が許された時、一度だけ目にしたことがあった。それを目の当たりにした山田はさすがに表情が一変し銀駒に慇懃無礼な態度を詫びるとともに言伝の答えを返した。 「山田浅右衛門、上様よりの命、委細承知」 山田は銀駒より闇鬼切を受け取ると、また一陣の風とともに銀駒がその場から姿を消した。
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