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受験期真っ只中の中学三年の秋。
生徒達は放課後学校に残り、皆一心不乱に参考書に向かっている。
自分には一生来ないであろうその光景を横目で見、夢都(ユメト)は足早に校舎から出ていった。
帰宅し、玄関のドアを開けると、部屋の中は荒れていた。
小さいアパートであるため、リビングとキッチンが玄関から見えてしまうのだ。
衣服等は散乱しており、金目の物は全て消えていた。
どうやら母が男と蒸発したようだ。
夢都はそのことを気にする訳もなく、自分の部屋に入り、バイトの支度をした。
夢都は未成年だが、歳を偽り複数のバイトを掛け持ちしている。
何故なら母が何も与えてくれないからだ。
金は勿論、衣服、そして食事。
夢都は高校には進学せず、就職しようと決心している。
仕事着に着替え、鞄を手に持つと、夢都はアパートを後にした。
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