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むかしむかしでもないたった今のおはなしです。世界のすみっこに、とある小さな小さな王国がありました。とても平和な王国です。争いなんてあるはずもありません。
でも、王国のまんなかに立つ雪のように真っ白で豪華なお城では、王さまと王妃さまが、パチパチとやさしくもえる暖炉のまえで夜な夜なこんなおはなしをしては頭をなやませていました。
「なぜ、あの子はあんなおとぎ話を知っているのかしら、わらわたちは“あのときにあのおはなし”を聞かせてあげたときから、一切おはなしなんて教えていないはずなのに」
王妃さまはちょこんと首をかしげます。ふわりと、その大層美しい金色の髪がゆれます。
「あの子の世話役には、あの子とのおしゃべりを一切しないようにさせているし、国民にも知られないように、城の外はおろか、あの子の部屋からすら出られないようにしているのだが……」
王さまは、その威厳たっぷりのあごひげをなで付けながらあっちこっちにせわしなく歩き回るので、その威厳はなくなりつつあります。
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