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「……ああ、しかし、いくら手間がかかろうとも、それでも、あの子は、我が子なのだ、愛しくないはずがあろうか。それをころすなどできようものか。だから、あの子には、せめてこの城の中でだけでもげんきに生きてほしいのだ」
とおくにいる王さまの顔はみえません、それでも、ふあんそうに暗やみをみつめる王妃さまには、そのちいさな声はとてもかなしそうにきこえました。
「ええ、それこそが、あの子とふれ合うことすらできないわらわたちが、あの子のためにできる精一杯の愛情なのだから……」
そうして、へいわな国の王さまと王妃さまのなやみごとは、いつまでたっても解決しないまま、夜な夜なきこえるふたりのおはなしは決してやむことはありませんでした。
「……ところで、今日はあの子の部屋がいやにしずかじゃないか?」
「あら、きっと疲れてねむってしまったのでしょう。だって、今日のあの子ったらとってもげんきでしたもの」
――A night for……
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