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野島さんは部屋に入るなり、直ぐにお兄ちゃんを見る。
「花菜さんのお兄様ですね?」
「ええ、そうです」
とお兄ちゃんが頷くと
「先程、お電話でお話しをさせて頂いた野島です」
名刺を差し出しながら、野島さんはお兄ちゃんに深々と頭を下げた。
「貴方が野島さんですか……」
受け取った名刺を見つめながら小さく呟くように言ったお兄ちゃんは、ジャケットの内ポケットにある名刺入れを取り出し
「いつも妹がお世話になっています」
と野島さんと笹島さんに自分の名刺を渡したが、笑顔もなく無表情のままだった。
野島さんはお兄ちゃんから名刺を受け取ると、また深々とお兄ちゃんに頭を下げた。
「この度は私共が付いていたにも関わらず、大変申し訳ございません」
野島さんの丁重な謝罪を受けたお兄ちゃんは
「いやいや、謝るのはこちらの方ですよ」
と言ってチラリと横目で私を見た。
「妹が皆様にご心配とご迷惑をかける事になってしまい、本当に申し訳ございません」
そう言ってお兄ちゃんは私に体調管理を怠ったせいで体調不良を引き起こしたのだと、社会人ならちゃんと体調管理しろと苦言を呈する。
─いや、確かにその通りなんだけど……
今、ここでそれを言う?
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