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きっと川田さんは素直な気持ちで、それも好意的に言ったのだろう。
だからこの微笑みに、悪意は無い。
そうだと頭ではわかっていても、私は素直に受け取れなかった。
何故なら私の心の中で一度湧き上がった黒い感情。
私の心の中で小さなシミとして存在し、今も尚じわりじわりと広がっているのだ。
黙ったまま私が川田さんの顔を見つめていると、それまで何も言わなかった野島さんが突然に口を開く。
「確かに……そうですね。私と野々村の仲がいいのは事実です」
は?
の、野島さん、何を言って……?
驚きのあまり私は思いっきり目を見開いて、野島さんを見た。
「私と野々村は職場の仲間であり、デザイナー同士としていつも共にいます。
そうそう一昨日、土曜日で休みですが二人で一緒に食事をしましたよ」
と言って野島さんは私にニッコリと微笑み返す。
野島さんのまさかの発言。それも意味ありげな言い方をしたから、私は驚き過ぎて目を見開くだけではなく、今度は口までポカーンと開けた状態になってしまった。
この野島さんの発言に驚いたのは私だけではない。
笹島さんは私と同様に目を見開いていて、驚きを隠せないと言わんばかりに私と野島さんの顔を見比べる。
そして剛田さんも驚いた様子で
「え?もしかしてお二人……」
そう言った途端に、何故かいきなり落ち込んだ顔になっていた。
川田さんはゆっくりと柴崎 圭以外の全ての者の顔を見渡して
「まぁ、そうなんですか? やっぱりそうですよねぇ」
と、さっきよりも更にニコニコと嬉しそうな顔になって笑った。
そして柴崎 圭は……
ヒッ! ヒィィィィ!
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