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だけど現在行われている打ち合わせに、私の複雑な心境など関係ない。 私情は無くして、気持ちを切り替えなければ。 そう思い、私は今、話し合っているウェディング用グッズの資料に目を通した。 ウェディング用グッズは全てParttenza『パルテェンツァ』ブランドとしてウブライダルサロンが販売する予定にしている。 販売の中心となる担当者はブライダルサロン担当の川田さんだ。 担当者として川田さんが提示した販売リストの確認を行なった野島さんが川田さんに詳しく質問をしていた。 その内容を聞き漏らすまいと必死に聞いていると、矢野さんが顔を私の耳元に近づけて小声で囁いた。 「ねぇ、野々村さん。柴崎と一緒に居たよね?」 「──ッ!」 慌てて耳元を抑えながら、矢野さんから遠ざかるように身体をひいた。 その時の私の目は矢野さんに睨みつけていたのだけど、矢野さんは気にも止めずに 「キミと柴崎と随分仲がいいんだね」 と言った矢野さんの表情。 冷酷さを滲み出したような笑みを浮かべ、冷ややかな視線で私を見ていた。 その視線──ゾクっとした。
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