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矢野さんは少し身を乗り出すようして、覗き込むようにして私の目を見たが、私は矢野さんと視線を合わしたまま何も言わなかった。
そんな私を見て、矢野さんはニヤリと厭らしい笑みを浮かべる。
「まぁ、いいや。ところでキミはもう柴崎と寝た？」
ガタン！
私の椅子の音が大きく鳴り響く。
矢野さんの言葉に反応した私は、椅子から思いっきり立ち上がってしまっていた。
立ち上がった私に、皆の視線が一斉に集まる。
「あ……」
どうしよう……
動揺している私に矢野さんが声を張り上げた。
「鍵、取れました！ 野々村さん、ありがとうございました」
「え？」
私の足元を覗き込む姿勢から身体を起こした矢野さんはニッコリと私に笑って、親指と人差し指で挟んだ鍵をユラユラ揺らして見せる。
「座った時に鍵を落としてしまって、野々村さんの椅子の下に鍵があった為、野々村さんに立って頂いたんですよ」
矢野さんは皆に向かってニッコリと微笑んでみせた。
矢野さんの言葉に野島さんは睨むように私を一瞥したが、直ぐに川田さんの方を向いて
「……もう一度この商品についてお願いします」
と言って打ち合わせを再開した。
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