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声も出せずに矢野さんを凝視する私の視線を矢野さんは逸らすと、皆の方に顔を向けた。
「すみません。僕はここで失礼させて頂きますね」
仕事に戻らなければならないと言って立ち上がった矢野さん。
スタスタと去って行った。
だけど私は……
ホッと安堵するなんて事は……無かった。
それを証明するかのように、膝の上に置いた私の両手はギューっと強く握り締めていて……
その強く握りしめたはずの両手。
小刻みに震えていた。
だけど自分の手だけが震えだけならまだしも、身体全体にまとわりつく不快感。
それも治ることが無くて……
目に浮かぶのは矢野さんの嘲るような笑み。
それが堪らなく不快で……
吐き気がする。
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