12502人が本棚に入れています
本棚に追加
矢野さんが去ったからだろうか。
「今日はここまでとして、また後日、改めてお話をしましょう」
柴崎 圭が打ち合わせの終了を告げた。
その言葉で私はやっとホッとした。
ああ一刻も早く、ここから立ち去りたい。
気持ち悪い。
気持ち悪くて、堪らない。
「川田」
と言った柴崎 圭が川田さんに目配せする。
「失礼します」
と言って川田さんは席を離れたが、すぐに複数の紙袋を持って戻って来た。
「本日もご足労頂きありがとうございました。当ホテルからのささやかなプレゼントをどうぞお受け取り下さい」
柴崎 圭の言葉に従うように、川田さんが紙袋を野島さんから順番に渡して行く。
次に手渡されたのは笹島さん。
そして川田さんが私に近づいてくる。
近づくヒールの音。
カウントダウンのように聞こえて、耳触りだ。
耳障り過ぎて……吐き気がする。
吐き気で堪らなく……気持ち悪い。
あまりの気持ち悪さに、自分の身体がどんどん冷えていくのがわかった。
だけど、我慢しなくちゃいけない。
我慢しようと顔を下向けて堪えていると、川田さんのハイヒールの先が目に入った。
川田さんが私の側に来たんだ……
私がゆっくりと顔を上げて、川田さんを見る。
私に紙袋を手渡そうとした川田さん。
その手を止めて、私の顔を見て言った。
「野々村さん、顔色が悪いですよ?」
最初のコメントを投稿しよう!