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川田さんの言葉に反応したのだろう。柴崎 圭がガタンと大きな椅子の音を立てて、勢いよく立ち上がった。 そ椅子から立ち上がって、すぐに私の元に駆け寄ってきたのがわかった。 何故なら誰よりもいち早く私の元に駆け寄ったからだ。 柴崎 圭は私の足元に跪いて、私の顔を両手で挟んで覗き込む。 「ナノ、どうした?」 と言った柴崎 圭の顔色は青く、私よりも顔色が惡いのじゃないかと思うほどで。 心配そうに私を見るその瞳は、柴崎 圭ではなく……私の知っている圭ちゃんの顔だと思った。 「だ、大丈夫……」 と弱々しい声で苦笑いする私に 「大丈夫じゃないっ!!」 と声を荒げ、剛田さんに向かって大声で指示する。 「剛田、フロントに連絡して部屋を用意しろ!」 「はい!」 剛田さんが慌てながらフロントへ向かう姿を見て 「本当に……大丈夫だから」 私は震える手を自分の顔にかざして制する仕草をした。 だけど圭ちゃんはその手を掴んで、眉を下げて辛そうな顔をした。 「全然、大丈夫じゃない。手、震えてる」 そう言って掴んだ私の手を見つめていた。
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