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「はい……立てます」
と答えたのだけど、なかなか立ちあがろうとしない私に野島さんが言う。
「歩けそうにないなら、少し横になった方がいい」
「いえ、本当に大丈夫です」
大丈夫だとアピールしたのだが、笹島さんが
「野々村さん……」
と心配そうな声を出した。
心配をかけたくない。
そう思って私は笹島さんに笑みを作りながら
「大丈夫です」
と伝え、圭ちゃんの顔を見て微笑んだが
「ナノ。無理しなくていい」
圭ちゃんは切なそうな顔で私を見ていた。
圭ちゃんはまだ心配している。
それなら……
私は自分の片頬に添えられた圭ちゃんの手を掴むと、その手を自ら離し
「本当に大丈夫だから……帰ります」
と伝えた。
だけど伝えた瞬間、圭ちゃんの瞳は悲しげな色に変わった。
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