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その先を考えたくない私は、首を静かに横に振ってお兄ちゃんに言う。
「……心配かけてごめんなさい。
何もないし、ただ私の体調が悪くなっただけだから……」
お兄ちゃんが訝しげに私を見るから
「ちょっと疲れてたのだと思う」
と笑って見せた。
「ハァ……心配をかけさせんなよ」
大きなため息をついたお兄ちゃんは呆れた顔する。
「ごめんなさい」
苦笑いして謝る私に、お兄ちゃんは何も言わなかった。
何も言わない代わりに、私の頭をクシャクシャにして撫でてきた。
頭を撫でられたままの状態でお兄ちゃんの顔を見つめる私に、お兄ちゃんは優しく微笑む。
穏やかな安心感に包みこまれた気持ちになっててホッとする私。
だけどそれは直ぐに私を現実へ引き戻した。
また玄関のチャイムが鳴ったからだ。
私とお兄ちゃんが玄関に視線を同時に向けると千沙が、『私が出ます』と言って玄関に向かった。
そして千沙に案内されて入ってきた訪問者──野島さんと笹島さんだった。
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