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これ以上何かを知るのは、 止めた方がいい。 高校時代、先生が、恋した人。 どんな人だったのか、 考えただけでこんなにも 苦しいのに、写真を見たりしたら、 …わたしのことだから、 きっと、ウジウジと 後悔するに決まってる。 「…卒業アルバムには、 載ってないよ」 先生の声に顔を向けると、 ――わたしの気持ちを 見通したような、 優しい瞳がこちらを 見つめていた。 …あれ…? その目に、わたしの心の一部が ピクッと反応した。 穏やかな表情だったけれど、 そこに…。 何か、…先生の心の奥底に沈められた、 苦しい感情のようなものが、 …透けている。 …どこかで、見た。 先生のこの目を、…わたしはいつか、 …どこかで、見たことがある。 急いで思いを巡らせたけれど、 …その既視感は、捕まえようと 伸ばした指先をすり抜け、 あっという間に何処かへ 消えてしまった。
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