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「哲哉くん、今日は 泊まって行かないの?」 「うん、帰るよ。 明日は、当番で 学校に出なきゃいけない 日だからね」 「なんだ、残念。 わたしは外泊届 出してきちゃったから、 泊まって行くね」 月子ちゃんは ブーツの音を響かせながら、 こちらに向かって歩いて来た。 途中で立ち止まり、 そうだ、と呟く。 「明日はお母さん、 お仕事休めそうだって 言ってたよね。 哲哉くんもみんなと一緒に、 夕飯、こっちで 食べるでしょ?」 「うん。そのつもり」 「じゃあ、哲哉くんの好きな 唐揚げ、いっぱい作って 待ってるね」 「ありがとう」 「じゃあ、また明日、哲哉くん」 月子ちゃんが 再び足を進める。 俯いていたわたしが 視線だけ上げると、 美しい微笑みが、 すぐ脇を通り抜けた。 「また月曜日、…萌先輩」 笑いを含んだような 低い囁きが、耳に残った。
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