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「…なんにも、聞かないの」
大通りに出て、
長い直線を走らせながら、
春山先生がぽつりと言った。
わたしは、
何をどう言ったらいいのか、
分からずにいた。
月子ちゃんのために
隠していたつもりのことを、
実はわたしがとっくに
知っていたとわかったら、
先生はどんな気持ちに
なるだろう。
知らないふりを続けていたことが、
まるで、今まで先生のことを
騙していたみたいで…気まずい。
それに、どうして知っているのかと
聞かれたら、…白井さんの名前を
出さなくてはならなくなる。
あの人とは関わらないって
約束したのに、…これもまた、
先生を裏切っていたようで…。
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