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「加賀は、こっちに来てから、 かなり安定しているんだ。 夏までは、今日子先生の カウンセリングを 受けていたんだけど、 もう、今は必要なくなってる。 特に、マミさんと 過ごすようになってから、 加賀の問題行動が ぴたりと止まったらしい」 「マミさんと…」 「うん」 マミさんの、優しい微笑みを 思い浮かべてみる。 「……分かる気がします」 「だろ。 マミさんは、加賀が何を 欲しがっているのか、 全部分かってるんだ。 あいつはずっと、 ……甘えたかったんだよ、 誰かに」 信号が赤になり、 車はゆっくりと停車した。 「温もりが足りないなら、 ……誰かが暖めてあげなきゃ、 可哀相すぎる」 ぽつり、と呟いた先生の言葉は 聞き違いかと思えるほど小さくて、 ……ラジオの音に覆い隠され、 すぐに消えてしまった。
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